2020年2月4日の『名医とつながる!たけしの家庭の医学』では、『冬の突然死を防ぐSP』が放送されました。
この記事では、生死を分ける分岐点とは?名医の症例ドラマ①脳の病についてまとめます。
動悸・高血圧を放っておくと…
山口道子さん(64歳・仮名)は、3歳下のご主人たかしさんと小さなパン屋さんを営んでいました。
ある朝、突然頭にとてつもない衝撃がはしり、そのまま帰らぬ人になってしまいました。
実は道子さんは突然死を回避できる分岐点を、間違った方向へ進んでいたのです。
彼女が誤った分岐点とはいったいどこだったのでしょう?
生死を分けた分岐点① 血圧測定をやめた
病の兆候が見られたのは、突然死を起こす2年前、道子さんが62歳の時でした。
近くに安売りのスーパーができたため店の売り上げが激減し、道子さんの頭はその対策でいっぱいでした。
最初の症状が現れたのは大好きな晩酌をいただいていた時、飲み始めて1時間が過ぎた頃でした。
病のサイン① 不意にドキドキと胸が高鳴る
心臓が突然暴走を始めたような鼓動を感じました。一瞬不安に思ったものの、「お酒が弱くなったのかも」と動悸はお酒のせいと考えました。
夫婦で会話をしている間に、動悸はいつの間におさまっていました。
病のサイン② 仕事中に動悸が起きる
その数日後、仕事中に動悸が起き始めたのです。
「お酒を飲んでいるわけでもないのに、どうしたんだろう?」と不安に思いましたが、そのうちおさまっていたのでご主人にも相談しませんでした。
病のサイン③ 2時間たっても動悸が治まらない
症状に変化が起きたのはその1か月後です。
いつもはすぐに治まるはずが、2時間たっても動悸が治まりません。
ご主人に相談し、翌日近所の内科を受診することにしました。
医師は心電図検査など様々な検査を行いました。
その結果、心電図には特に異常がみられませんでした。
最高血圧144㎜Hg、最低血圧90㎜Hgと少し高めでしたが、塩分を控えるようにと言われただけでした。
この日から念には念を入れ、なるべくアルコールを控えるようにしました。
食事も減塩やカロリーに気を付けるようになりました。
ご主人も血圧計を買ってくるなど健康管理に協力するようになり、日々の血圧の変化を記録するようになりました。
血圧は毎日140前後を行ったり来たり。
さほど大きな変化がないため、「血圧はもう大丈夫」と血圧測定をやめてしまったのです。
これこそ最初の生死を分ける分岐点でした。高血圧のケアで病の進行を止められたのに…
生死を分ける分岐点② 動悸を感じない
病のサイン④ 動悸を感じなくなる
最初の症状から半年後、動悸を感じなくなっていました。
そのため道子さんは血圧測定だけでなく、病院へ通うこともやめてしまいました。
実は頻繁に起きていた動悸を感じなくなることこそ、生死を分ける分岐点でした。
検査をすれば病の発見ができたのですから…
道子さんは病の兆候に気づかないまま、いつもの晩酌を復活。
決して踏み出してはいけない方向へ、歩みを進めてしまったのです。
生死を分ける分岐点③ 頻尿は年のせい
病のサイン⑤ 強い尿意で目を覚ます
最初の症状から1年後、道子さんに新たな異変が襲いかかります。
眠りについてから2時間後、強い尿意で目を覚まします。
「この日はお酒を飲みすぎたので、トイレが近くなった」と思った道子さん。
ところがその後も、夜中にトイレで目を覚ますことが増えていったのです。
「頻尿は年のせい」と思い、なるべく水分を摂らないよう対処したのです。
泌尿器科で病を発見できたのに…
生死を分ける分岐点④ 目がぼやけても気にしない
病のサイン⑥ 目の前がぼやけてはっきりと見えない
ここまで3つの分岐点を誤った方向へ進んだ道子さんですが、最後のチャンスが訪れます。
朝の忙しい時間、突然自分の視界に異変を感じたのです。
突然視界がぼやけて、はっきりと見えなくなりました。右目が見えづらくなっていたのです。
30分ほどで目のぼやけは消えました。
それで「やっぱり疲れているのね」とスルーしてしまいました。
この症状こそが、最終警告だったのです。
タイムリミットは48時間以内。
ところが、道子さんは自らの時限爆弾に気づくことなく、運命の48時間後を迎えてしまったのです。
意識不明のまま緊急搬送されたものの、帰らぬ人となってしまったのです。
命を奪った病の正体とは?
心原性脳梗塞(ノックアウト型脳梗塞)
道子さんを襲ったのは、心原性脳梗塞(ノックアウト型脳梗塞)でした。
【心原性脳梗塞】
ミニトマト大の血栓が脳に詰まり、突然死をもたらす
そんな恐ろしい病にも4つのサインがありました。
サイン①動悸の原因 心房細動
サイン①動悸の原因とは?
加齢や高血圧で心臓に異常な電気信号が発生⇒動悸や不整脈を起こす心房細動
【心房細動とは?】
●心臓が細かく震え不規則なリズムで拍動を繰り返す
●多くの場合大事に至ることはなく、経過観察が大切
心房細動はたまにしかおきませんが、高血圧によって心房細動が慢性化すると…
⇒常に心臓が震える
⇒血栓ができやすくなる
これが最初の分岐点でした。
サイン②動悸がなくなる原因
サイン②動悸がなくなる原因とは?
心房細動は最初発作性心房細動として始まり、突然起こり突然止まるため気付きやすいのですが、発作を繰り返すうちにだんだん身体が慣れて変化に気づかなくなるのです。
高血圧で動悸が慢性化⇒身体が慣れて異変を感じなくなる
動悸は治ったのではなく、感じなくなっていたのです。
この時行くべき診療科は循環器内科です。
適切な治療を受ければ、突然死は回避できたのです。
サイン③頻尿の原因
サイン③頻尿の原因とは?
この頃慢性化してしまった心房細動の影響で、利尿を促す成分が分泌されるようになっていました。
この時泌尿器科で動悸と頻尿を訴えれば、突然死を回避することが出来ました。
しかし道子さんは頻尿を年のせいと考え、間違った方向へ進んでしまいました。
慢性的に起きている心房細動によって、巨大な血栓が作られ始めていたのです。
その血栓の大きさはなんと直径3~4㎝もあり、この血栓から最終警告が送られていたのです。
サイン④目のぼやけの原因
サイン④目のぼやけの原因とは?
心臓で作られたミニトマトほどの大きな血栓の一部が剥がれ、脳に到達することで目の血管を詰まらせ、視界に異変が起こったのです。
【目の症状以外には?】
●手のしびれ
●脱力感
●ろれつが回らない
とはいえ血栓は小さいものが多く、溶けて症状も消えることも多いそうです。
この段階で病院にかかれば…薬によって血栓を溶かすことが可能でした。
道子さんは最後の分岐点も見逃した結果、心臓から剥がれた巨大血栓が血流にのり脳に到達し、あっという間に脳細胞が壊死してしまったのです。
ノックアウト型脳梗塞のMRI画像を見てみると、脳の動脈が塞がれたことで黒くなっている部分が半分以上壊死してしまっていることが分かります。
この様な状態を避けるためにも、症状や高血圧に気を付け、生死を分ける分岐点を見極めることが大切です。
ノックアウト型脳梗塞になりやすい性格とは?
ノックアウト型脳梗塞にならないようにするためには、症状や高血圧に気を付けることが大切ですが、その他にもノックアウト型脳梗塞になりやすい性格があるそうです。
教えてくれたのは、葉山ハートセンター 不整脈センター長 佐竹修太郎先生です。
佐竹先生は20年以上にわたり、ノックアウト型脳梗塞を未然に防ぐ方法を研究している世界的なパイオニアです。
心臓のリズムは自律神経が調節しています。
自律神経は性格と密接な関係があるそうです。
ノックアウト型脳梗塞のリスクをチェック!
今回は佐竹先生監修のもと、ノックアウト型脳梗塞のリスクがある患者さんの性格を調査し、問診を作成しました。
A子さん、B子さんのどちらの行動に該当するか、チェックしてみましょう。
【5つの性格問診】
1.待ち合わせの時間
A.約束時間の前に着く B.ギリギリだったり少し遅れる
2.お店を選ぶ時
A.行列には並ばない B.行列に並ぶ
3.旅行の計画を立てる時
A.事前に綿密な予定を組む B.予定は大まかに決める
4.飴をなめる時
A.すぐ噛む B.最後までなめる
5.映画のエンドロールが流れた時
A.すぐ席を立つ B.最後まで観る
A、Bのどちらが多い人がノックアウト型脳梗塞になりやすい性格なのでしょう?
⇒Aが多い人
心房細動の患者さんは、平均してAが3個以上だったそうです。
タイプAの人はどうすればいい?
A子さんの性格:せっかちでいらいらしがち、几帳面な性格。
=タイプA(Type Agressive)
日常的にストレスを受けやすいため、心臓病になりやすい
ストレス⇒自律神経を通じて血圧や心拍数が上昇⇒心臓にダメージ
という悪循環が生まれやすいそうです。
タイプAの人は、次のようなことを心がけるといいそうです。
●リラックスする時間を意識的に設ける
●深酒を避ける
動悸・高血圧を侮らない!
今回の症例では、動悸・高血圧など病につながるサインを学ぶことが出来ました。
こうした症状を侮らず、早めの予防や受診をこころがけたいですね。
次のページでは、症例②についてまとめます↓